ACモーターの速度制御の核心は、モーターの種類(非同期モーター/同期モーター)と適用シナリオ(例:速度制御精度、コスト、エネルギー消費)に基づいて、電圧、周波数、電流、磁場などの主要なモーター入力パラメータを調整することにあります。以下は、主流の制御方式を技術成熟度と適用範囲別に分類した詳細な分析です。
I. 「電圧周波数協調」に基づく速度制御(非同期モータの主流)
非同期モーターの速度の式は次のとおりです。 n = 60f(1-s)/p (ここで、f = 電源周波数、s = スリップ比、p = モータ極対数)。「周波数f」と「ステータ電圧U」を同期的に調整することで、広範囲かつ低損失の速度制御が可能となり、業界で最も一般的に使用されているソリューションとなっています。
1. 可変周波数速度制御(VVVF、可変電圧可変周波数)
- 原理: 産業用周波数の AC 電力 (例: 220V/50Hz、380V/50Hz) を「周波数変換器」を介して「調整可能な電圧と周波数」の AC 電力に変換し、さまざまな速度に対するモーターの要件を満たします (周波数が増加すると速度が増加し、その逆も同様です)。
- キーロジックモータのステータインピーダンスが固定されている場合、U/f比は一定である必要があります。そうでない場合、磁束飽和または磁束不足が発生し、モータの焼損やトルク低下につながります。そのため、周波数変換器は電圧と周波数をリアルタイムで調整する必要があります。
- 分類:
- スカラー制御: 電圧と周波数の振幅のみを制御します。構造がシンプルでコストが低いため、ファンや水ポンプ(例:家庭用エアコンの室外機)など、速度制御精度の要件が低い用途に適しています。
- ベクター制御:モータ電流を「励磁電流」と「トルク電流」に分解し、それぞれを正確に制御することで、DCモータと同様の高い動的応答を実現します(例:CNC工作機械、エレベーター牽引機)。
- ダイレクトトルクコントロール(DTC): 電流分解を省略し、モーターのトルクと鎖交磁束を直接制御します。応答速度が速く、圧延機やサーボシステムなどの高ダイナミックレンジの用途に適しています。
- 利点:広い速度調整範囲(0~定格回転数、定格回転数を超える回転数まで)、高効率(定格効率に近い)、安定したトルク。
- デメリット: 周波数変換器のコストが高い。高周波数では高調波干渉が発生する可能性がある(フィルタを追加する必要がある)。
2. ソフトスタータ速度制御(補助速度制御、不連続速度制御)
- 原理:サイリスタ(SCR)を介してモータステータ電圧を徐々に上昇させることで「スムーズな起動」を実現し、起動時の大電流による影響を回避します。一部のソフトスタータは「電圧制御型速度制御」(電圧を下げることでスリップ率sを低減し、間接的に速度を低下させる)をサポートしています。
- 応用: 起動段階または短時間の低精度減速(例:コンベアベルトの軽負荷速度制御)にのみ適用可能。広範囲の連続速度制御は不可能(電圧が低すぎるとモータが過熱する)。
- 利点: 周波数変換器よりも低コスト、完全な保護機能(過電流、過負荷)を備えています。
- デメリット速度調整範囲が狭い(通常は定格速度の 70% までしか下げられない)、低速では力率が低い。
II. 極対調整による速度制御(可変極速度制御)
- 原理: 非同期モータの速度式によると n = 60f(1-s)/pモータの同期速度は、モータ固定子巻線の極対数p(例:2極→4極)を変更することで直接変更できます。50Hzでは、2極モータの同期速度は3000rpm、4極モータの同期速度は1500rpmです。
- 実施方法モータ巻線の「整流スイッチ」(スターデルタスイッチング、ダブルスタースイッチングなど)を介して巻線の電流方向を変更し、それによって極対の数を変更します。
- 応用: 「段階的な速度制御」が求められる用途(例:パンチプレス、コンプレッサー、ファン)にのみ適用されます。モーターは複数の極ペア(例:2/4極、4/6極の2速モーター)に対応できるように設計する必要があります。
- 利点: 構造がシンプルで、コストが低く、動作が信頼でき、速度調整時に効率の低下がありません。
- デメリット: 固定ギアの速度調節(例:2 ギア、3 ギア)のみが可能で、連続的かつスムーズな速度調節は不可能です。
III. 「スリップ率調整」に基づく速度制御(低精度、低消費電力シナリオ)
速度制御は、モーターの「スリップ率s」(実速度と同期速度の差)を変化させることによって実現されます。これは、精度要件が低く、電力が小さいモーター(例:家庭用ファン、小型コンベア)に適しています。
1. 固定子電圧調整速度調整
- 原理電圧調整器(例:オートトランス、サイリスタ電圧調整回路)を介して固定子電圧Uを下げると、モータトルクTが減少します(TはU²に比例します)。負荷トルクが変化しない場合、スリップ率sが増加し、実速度が低下します。
- 利点: シンプルな回路と極めて低コスト。
- デメリット速度調整範囲が狭い(10%~30%の速度低下しか実現できない)、低速時にモーターが激しく加熱する(スリップによる電力損失が大きい)、トルクが不十分。
2. ローター直列抵抗速度制御(巻線型非同期モーターのみに適用)
- 原理巻線型非同期モータのロータ巻線には、外付け抵抗を接続することができます。ロータ回路抵抗R2を増加させると、スリップ率sが増加し(sはR2に比例します)、実速度が低下します(同期速度は変化せず、スリップの増加は実速度の低下につながります)。
- 応用: 「短期的な速度調整」または「始動時の速度調整」のシナリオ(例:クレーン、ウインチ)に適しています。抵抗値を手動または自動で調整するには、「ローター可変抵抗器」と組み合わせる必要があります。
- 利点:構造が簡単でコストが低く、速度制御時にトルクが安定しています(始動トルクが大きい)。
- デメリット: 低速時のローター抵抗損失が大きい(電気エネルギーが熱エネルギーに変換される)、効率が低い、速度制御精度が悪い(抵抗ギアが制限される)。